釣りが「苦しい」と初めて感じた。
そもそも釣りは遊びなのだが、複数で釣りに行った時に
自分だけ釣れないと、結構寂しい思いをするけど、
今回の「シイラ大会」は辛かった・・・・
とにかく厳しい釣りだった。
丸八丸の船長は、小さなパヤオを中心に数多く廻ってくれたのだが、
不発のパヤオが多く、概ね5割の確率。
シイラが付いているパヤオでも、多くて3匹、少ない時は1匹という状況で、
「夏シイラの群れ」に全く当たらない。
僕の知っているパヤオは「赤くて大きい」
だから船長が小さなパヤオを廻っていると、
「なんで、大きなパヤオに行かないの?」と疑問に思った。
後で、F原名人が、こんなことを言っていた。
「今日の船長は凄いよ。
だって、大会は8人の合計でしょう。
だから大物で不発・空振りより、
小さくても数のでる場所に案内してくれたよね~
乗っている時は、分からないけど、
終わってから他の船の状況と比較すると船長の腕が分かる」
なるほど・・・
船長も凄いが、F原名人のコメントも名人級です。
「第8回 メトロポリタン・オフシェア・フライフィッシング・トーナメント」
8th Offshore Fly Fishing Tournament
大会開催直前の雰囲気です。
2015年7月25日
http://flyfishing.yokohama/ 20150725 8th Metropolitan Offshore Fly Fishing Tournament – Spherical Image – RICOH THETA
さて、今日も沢山釣りますよ
と思っていたのですが・・・
http://flyfishing.yokohama/ 20150725 8th Metropolitan Offshore Fly Fishing Tournament – Spherical Image – RICOH THETA
とにかく、シイラが少ない。
小さなパヤオにルアーを投げると、
ルアーに反応して追いかけて来る。
(これは、魚を船の周りに寄せる為に、
ルアーに針を付けないで投げるシステムで
ティージングと言う)
イワシを巻いて、散水して、全員が竿を構えて
いつでも戦える状態にしているのだが、
寄ってくる魚は2~3匹
しかも、散水の下には来ないで、
船の周りをグルグルと廻って、
プイっと沖に戻って行く。
俺は、最もシイラを釣りやすい散水の場所に位置していたが、
魚は、船の後ろとか、散水とは反対側とかに廻って
とにかく散水の下には寄りついてこない。
暫くすると、さすがに名人・ベテランが揃っているから、
1人、2人と釣ってて来る。
二時間位経っただろうか・・・
釣っていないのは俺とY田さんの2人
釣り人なら経験あると思うが、
「最後の1人に成りたくない。残されるのは嫌だな~
なんとしてでも、先に釣るぞ!」」
と心の中で思う。
でも、今日は「俺様の日」では無かったようだ。
散水の脇でY田さんが釣りあげた。
俺の横で・・・・
さすがに1人になると、焦る。
レジャーの釣りなら「まあ、こんな日もあるさ、自然相手だからね~」
と達観していられる年齢に成っているのだが、
トーナメントで全員の長さを競うとなると、
俺1人の問題ではなくなる。
「いや~、皆に迷惑かけたくないよ
俺が釣れなくて優勝逃したら悪いじゃん」
と、まだこの時は軽口も言っていた。
パヤオからパヤオに移動するのに15分とか20分はかかる。
次のパヤオに行っても、また次のパヤオに行っても、
俺にはバイト(当たり)が無い
釣れていないのが俺一人になってから、1時間は経過しただろうか?
残り時間も余り無い。
船頭に陣取って、早1時間。
その頃になると、船の先頭だけは、雰囲気が重たい。
パヤオへの移動は、それぞれ自由に時間を過ごす。
釣れた人は「役目は果たしたぞ」という安堵感が
身体から自然と出ているし、釣れている同士で笑顔の会話が見える。
しかし・・・
船先だけは、異様に重たい。
なごみの店長が気をつかってくれる。
隣りに座ってくれて、話しかけてくれるのだけど、
「ああ、そうですよね~」とか
「そうなんだよな~」とか
簡単な言葉しか出なくなっている。
船の最後尾でF原名人が手を振ってくれている。
F原名人は「釣りの神様」人生の術えを召し上げられた様な人なので、
俺の様な状況などは何度も経験しているのだろう・・
だから手を振っている顔には「ドンマイ」と書いてある。
気付くと、俺の周りには誰も居ない・・・・
「なんで、釣りなんかで、こんな思いしなくちゃ、ならないの?
正直、もう嫌だな~
面白くない!
おれ、絶対に釣りを止めるぞ。
8月のシイラも行かないぞ。
もうシークロにも乗らない。
止めた、止めた、釣りなんて止めた!
しかし、このまま閉会式になったら、、
俺は沈んでいるからチームは楽しくないよな~。
参った~、
でも、何で? なんで俺だけ釣れないの??」
1人舵先に陣取りながら、1人ごちする。
白いパヤオが見えた。
K谷さんとK尾さんが、
僕の為にルアーのティージングでシイラを寄せてくれている。
幸い、シイラが3匹寄って来た。
シイラはティージングしているルアーを追いかける。
ルアーーを引く
シイラが3匹、右、左と旋回しながら、
次々にルアーを追いかけている。
俺の場所からその光景が見える。
船に中腹の近づいてきた。
でも、シイラは俺が居る散水の場所には寄って来ない。
イワシを巻くけれど、なぜか?俺の所には寄って来ない。
シイラは見えている。
ルアーを追いかけている
俺の方に寄って来た!
やる気もある。
よしゃ~、と思ったその時、
俺の左隣りの名人が、
「よっしゃ~」と言いながらシイラが釣り上げた。
30cm右わきには俺のフライがある。
勝手な想像だが、譲ってくれていたら、俺のフライに反応した気がする・・・
「そりぁ~、無いよ」
俺、俺一人だけ釣れていないんだよ。
最後の、最後まで俺だけが釣れていない。
ルアーでシイラを寄せてくているのは、誰のため?
隣りで釣りあげられた時の「哀れな気持ち」分かるかい?
たかが釣り、所詮は遊び。
でも、チームで競う大会に参加しているのだから、
先ずは「全員揃える」ことが最優先だと思うのだが・・・
俺ならば、釣れていない人がいれば、
その人を最優先で釣らせるのがチームだと考える。
まあ、人には人の人生観と哲学があるから、
良しとしますが・・・
でも、困った。
まだ、まだ俺は釣れていない。
店長に残り時間を聞いたら、
あと1時間位とのこと。
正直、諦めようと思った。
投げやりで、不機嫌な態度になったその時、
また小さなパヤオが見えてきた。
その時、スッとK尾さんが僕の隣りに近寄って、
ルアーを構えてくれている。
K尾さんは元々ルアーマンなので、投げるのが上手い。
。
そう、K尾さんは「僕の専属ティージング」を
買って出てくれたのだ。
パヤオに投げた
幸いシイラが2匹、ルアーを追いかけてきている。
K尾さんは俺の右横の船先で投げてくれているから、
誰も邪魔をする人は居ない。
その時、K尾さんが、
「あっ、食べた。
ルアーを食べてる。
あっ、また食べた」
シイラを船に寄せる為のルアーだから
針は付いていない。
シイラがルアーを食べても「すぽっ」と抜けてしまう。
シイラは再び、ツアーを追う、
食べる、抜ける、追う、食べる、抜ける・・・
2匹とも、俺のフライの横まで引き寄せてくれた。
ピシっ、ピシっ、ピシっ、ピシっ、
俺は、懸命にフライを投げる。
しかし・・・・
何故か「駄目」
全く反応しない!
顔をフライに向けるのだが、食べない。
「ふん」
という感じで見るだけで終わる。
そうこうしている間に、シイラは沖に戻っていった。
・・・
船先からシイラの後ろ姿を眺めて
「あ~、最高のチャンスをものにできなかった。
あ~、もう嫌だな・・・」
とつぶやいていた。
と、その時、
K尾さんが再び、
沖に向かってルアーを投げてくれている。
去って行くシイラの鼻先にポチャンと落ちて、
寄せるルアーに向かって
シイラが反転した。
その光景をず~っと、俺は見ていた。
不思議なことに、全く興奮することもなく、
他人事の様に、テレビの番組でも見ているかの様に
冷静に眺めていた。
K尾さんが
「食べた。
また、食べた。
ああ、3回食べた」
その声で我に返り、
海を見ると
シイラが2匹、また船の傍に寄って来ている。
フライが届く距離に入った。
その時、
1投だけフライを投げた。
シイラは2匹、船に寄ってきている。
左側のシイラが、俺のフライに顔を向けた。
見た!
俺の、俺のフライを見た。
次の瞬間スッと魚が左に動いた
ヒット!
目の前でフライをくわえるのを見た。
手に重さが伝わる。
余り大きくは無いが、
50cmは絶対に越えている。
ドラグを強めにしてあるけれど、
ラインが伸びて行く。
雄だ~
この引き方は雄だ~
10フィート位ラインが出てから、
リールファイトを繰り返す。
F原名人から声がかかる
「宮坂さん、ばらしたら怒るよ。
絶対ばらすなよ」
そう、仰っても・・・・
普段なら余裕で引き寄せられるけど、
頭の中は霞んでいるし、思考は雲がモクモクしている状態だし、
ちょっと胸もキュンキュンしている。
ランディングは店長がしてくれた(のだと思う)。
俺は座り込んで竿を操作していたから、
余り覚えていない。
船内に歓声が沸き起こる。
「やった~」「よしゃ~」「ひゅー」
言葉を選ばずに表現するならば
「青春映画のクライマックス」
まず、店長が俺に抱きついてきた
「宮坂さん、おめでとう」
気のせいか目が潤んでる。
K尾さんも「宮坂さん、おめでとう」
仲間達が次から次に
「やったね~」「おめでとう」「やり~」と言いながら
駆け寄ってきてハイタッチ。
いや~、良かったよ
本当に良かった。
達成という満足感ではなく、「良かった」「助かった」という安堵感
ホッとした。
このシイラは、正直、K尾さんに釣らせて頂いたのです。
ティージングで何度もシイラ寄せてくれて、
俺の目の前まで誘導してくれたから釣れたのですよ。
いいね~
たかが釣り、所詮は遊び。
でも、釣りの中に人生があり、哲学もあり、
そして友情もチームワークもある訳だな~
楽しいね~、釣りは!
うん?
先ほどまで「釣りを止める」と言っていたのは誰??
結局、この1匹がチームに大きな貢献をしたことになった。
閉会式の時に、他のチームの様子が耳にしたが、
どうやら「8人揃わないチームが結構あった」らしい・・・
ルールは50cm以上のシイラの8人合計で競うから、
1人欠けるとマイナス50cm。
まあ、全員揃えることが勝つ為のルールだわな
我が「チームなごみ」は・・・・・
優勝です。
ゆうしょう、一番、ナンバーワン
日本一小さなフライショップ「なごみ」のチームが、
世界一大きなフライショップ「サンスイ」を破って「優勝」しました!
http://flyfishing.yokohama/ 20150725 8th Metropolitan Offshore Fly Fishing Tournament – Spherical Image – RICOH THETA
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