昨年秋、なごみの店長が興奮しながら
「宮坂さん、凄いんですよ80cm以上のシーバスがフライを追うのが見えです。
船の脇まで追ってくる。餌はね~コノシロなんですよ。
30cm以上のコノシロを80cm以上のシーバスが追いかけているだよ。
今まで見たことのない光景で、絶対に興奮するもう、絶対に年中行事にする」
と言っていた。
でも、この時は、海シーバスを始めて数ヶ月しか経っていないから
そもそもコノシロなる魚を知らない。
色も、大きさも、形も分からないから、
店長の興奮が理解出来ない・・・
「ねえ、宮坂さん
なごみのお客さんでコノシロシーバスをやりたいって人が居るから
一緒に行ってみなよ」
とやたら薦める。
そんで、携帯電話でそのお客さんに電話して、
釣りの話を始めてから、
その後、僕に代わった。
まあ、ひと通りの挨拶をして
連絡先を確認し、
後日、予定を組んだ。
でも、この年は、予定を組んだ時には
既にコノシロは姿を消してしまい、
目的だったコノシロシーバスは中止したのだが、
でもお互いに楽しみにしていたから、
結局、夜のボートシーバスに行って、
僕は84cmを釣り上げた訳だが・・・・
今年は色々なことが起こった。
まあ、毎年、山盛りのポテトみたいに
次から次に、沢山の出来事があるけど、
親としての自分のことや、子供の成長を本気で考えて、
こんなにも心が砕けそうに感じたのは初めてのことだ。
7月の24日を最後に海フライのシーバス釣りは突然途切れた。
・・・・・・(削除)
いままで、頭の中は「シーバス釣り」が占めていた。
でも、この日を境に「家庭」「子供」「教育」「健全」・・・
と言ったことが次から次に浮かんでくる様になる。
・・・・・・(削除)
幸いと言って良いかどうか不明だが、
何とか普通の生活に戻ってきた(と思える)
そうは言っても、・・・・
9月が過ぎ、10月
まあ、色々なことがあった訳だが、
秋、フリース素材の洋服を着込む季節になって、
また少しだけ魚のことを考えることが出来て、
ちょっとだけ心が潤った。
この季節はランカー狙いの時期
産卵を控えたシーバス達の荒食いが始まる。
そして、川に逃げていた「大物」が海に戻ってくる。
いや、正確に言うと、
春から夏の間、大物がどこに隠れていたのかは誰も知らない。
岡本キャプテンは
「う~ん、正確には分からないだよな~
でも、海には居ないと思う。
毎日お客さんを連れて横浜港を案内するけど、
春から夏の間には大物は釣れていない。
だから、川に遡上したんだと思う」
と言っている。
竜ちゃん(升田キャプテン)も
「川だよ。
だって、俺の地元の金沢では、
ランカーが潜んでいる場所があるからね~」
と言っていた。
どこかに隠れていた大物=ランカーは
10月になると海に戻ってくる。
10月は「イワイミノー」を使って
昼間のトップウォーターの釣りだから興奮する。
でも、正直当たり外れがあって、
外れの日は全く釣れない。
そんな日はシンキングに切り替えれば良いのだけど、
中々その踏ん切りと言うか、決断ができなくて
夕方まで坊主って日がある。
因みに「ランカー」ってなに?
実は、皆が大物のことをランカーと言っているから
僕も「ランカー」なる言葉を使ってはいるけれど、
正直意味は分からない。
ネットで調べると「シーバスの80cm以上をランカー」
と書かれているけれど、全く信用出来ない。
そもそも、ランカーの意味が分からないのに、
何で「80cm以上がランカー」などと定義されるのかが
全く意味不明
まあ、僕の推測だが「ランキング(順位)」の高い人を
「ランカー」と言うから、
シーバスの大きさを競う時に
順位の高い人をランカーと呼び、
そこから大きなシーバスをランカーを言うのだと思う・・・
まあ、とにかく10月になって
少し家庭が落ち着いたので、
何とか釣りのことを考える時間が出来てきた訳で、
この釣りを考える時間を持てるというのは
幸せなことなんだと、改めて思った。
昨年の夏から約1年間、
毎日、毎日、「横浜湾のシーバス」のことを
まるで恋人の事を考える様に、
頭に浮かんできて、
あのフライが効くとか、
投げ方はこうだとか、
こんなことを考えている時が
実は幸せな時だったんだと思う。
釣りは幸せの証しなんだね~
まあ、そんな状況変化と心の移り変わりがあったけど、
思いきってコノシロのシーバス狙いをすることにした。
11月19日
この日は平日の水曜日
東神奈川の町は普段と同じ様に
サラリーマンが歩いているし、
主婦や学生もいつも通り振舞っている。
風が強い。
参ったね~
ただでさえ大きなフライなのに、
風が強いとなれば、こりゃ~投げられんわ
と思いながらも、
午後には風が止むという予報を信じて
コノシロのポイントに向かった。
横浜港、東神奈川を出てから横須賀方面に1時間ボードで移動
何でも、ここのポイントは「極秘」とのこと
数名のボート屋しか知らないし、
一般の客は入って来ない。
ボート屋にも、どうやら派閥があるみたいだ。
派閥と言うか、まあ仲間のグループって感じだと思うが、
このポイントは横浜港のある一部のグループだけが
使っているとのこと。
他のグループの知っているらしいが、
小さなポイントなので
割って入ることはしないし
遠慮しているとのこと。
ポイントの大きさは
そうだな~
日産スタジアムが2つ位。
この「日産スタジアムが2つ」位の場所に
コノシロの群れが居るらしい・・・
ポイントに到着すると
竜ちゃん(升田キャプテン)が魚探で
コノシロを探している。
「う~ん、う~ん、う~ん
・・・・
居ない」
嫌な予感がする。
ボート屋のキャプテンって
大変な仕事だと思う。
「魚を釣らせる」のが本業だから、
お客は釣れる場所に連れて行ってもらえると
当然のごとく思っている。
自然相手の遊びだから、
釣れないからと言って怒るお客は居ないけど、
キャプテン達は、それでも責任を感じてしまう。
しばらくしてから
「おうっ、
真っ赤だ。
居る、居る。
こりゃ~、宮坂さん
うじゃ、うじゃ居る。
今まで最高かも」
とにかく、今日はコノシロは沢山いるらしい。
竜ちゃん(升田キャプテン)に
シーバスが居るかどうかを尋ねたが、
そこまでは分からないらしい。
「僕はコノシロの居る場所にボートを動かすから
宮坂さんは、まあ、力と気力の続く限り、
フライを投げまくってよ。」
ということで、自作の大きなフライを投げることにする。
でも、風が・・・
今まで経験したことがない強い風なので
立って投げられない。
一段高くなったところに腰掛けて、
中腰で投げる。
でも、コノシロのシーバス釣りは
「オープンウォーター」と呼ばれる釣りなので、
コノシロの群れのある場所ならば
どこに投げても良いし、どこから引っ張っても良い。
今回使ったタックルは8番の竿に
シンキングと呼ばれる沈むライン(糸)を使って、
水面から数メートル下まで疑似餌を沈める。
釣り方は、沈めたラインを引っ張ることで、
先端に付いている疑似餌が泳ぐ様に引っ張られて
シーバスが餌と間違えてアタック(食べる)する・
だから、ラインと呼ばれる糸を長い距離出すことが出来れば、
長い距離のポイントを探ることが出来る。
風が強いとボートが流される。
これが、利点になる。
遠くまで投げなくても、ボートが流されるから
糸を長く出せば、自然と長い距離を沈めることになる。
最も、ボートが流されるには少し時間がかかり、
持て余す事になるのだが、
釣りが出来ない訳ではないので良しとする。
何時間投げただろうか?
釣れたのはコノシロが1匹と
根掛かり3回
キャプテンの竜ちゃんはルアーを持参している。
別に竜ちゃんは釣りを楽しむ為に用意している訳ではなく、
ルアーでコノシロを釣って、
コノシロを「生餌」にしてシーバスを呼び寄せる
ティザーと呼ばれる漁法の為に持ってきている。
コノシロの群れにいるシーバスは、
大きな餌の中で生活をしているから、
食べることには困らないし、
飽食の生活に浸っている。
だから、多少の餌が流れてても、
また多少の餌が目の前にあっても
食べようとはしない。
でも、少し変わった餌?には
好奇心を持つと思われ、
反射的に追ってくる。
特に竿の先から糸にぶら下がる「生餌」は
群れの中のコノシロとは違った
奇妙な動きをして、
更にキラキラと光るから、
異常な存在感がある。
キャプテン達は、
「生餌」をボート付近に流して、
コノシロの異常な存在感に引っ張られて
飛び出してくるシーバスを誘ってくれている。
そしてシーバスが浮いてきた時に、
釣り人を交代して、
釣り人の疑似餌(フライ)を食べさせる。
僕がオープンにフライを投げる。
船が流れる。
キャプテンが「生餌」で寄せをしてくれる。
投げる。
流れる。
寄せる。
それを繰り返していた時
「ああっ、
やばい!
釣れちゃった」
とキャプテンが騒いで、
ロッドが半月の様にしなっている。
「生餌」にシーバスが反応したのだ。
本来の目的は寄せておいて、お客さんに交代する訳で、
まあ、今回で言うと僕にバトンタッチする訳だが、
タイミングが良く、いや悪く、
釣れちゃったということだ。
でかい!
80cm以上はある。
その大きなシーバスの後ろに、
更にデカイシーバスが付いてきている。
「居る、居る
もう一匹居る。
宮坂さん、竿だして、早く、竿、出して!」
でも、ざ、残念
僕のフライ(糸)は遥か15メートル先まで流れていて、
回収するには時間がかかる。
仕方がないから、
キャプテンが取り込むのを見ていた。
結局、この日は、これしかシーバスは出て来なかった。
居る!
80cm以上のシーバスが居る。
このことは実証された。